不動産業界で経験する行政書士業務
不動産業界にいると、各士業の方と仕事をすることが多い。
トラブルに関しては弁護士。 顧問弁護士の先生には事あるごとに相談に行く。
境界確認や分筆に関しては、土地家屋調査士にお世話になる。
登記は勿論、司法書士。登記についての相談も含めると一番多いかもしれない。
土地の評価については不動産鑑定士。
そして税金やお金の流れについては税理士。こちらもお世話になる事が多い。
では、行政書士はどうか。
会社として付き合いのある行政書士はいない。
本来行政書士が扱うべき業務と思われる事を、不動産業者として行う事が多い。
例えば、 •道路占有許可(工事の段取りで) •屋外広告物の申請、更新(管理物件) •内容証明の作成(督促や覚書) •車庫証明(管理ガレージ) •農地転用について(売買の際) •コロナ関連の補助金の申請(管理テナントより) などなど。。
行政書士業務は範囲が広いので多くあるのが実体。
しかし、以前にもこのブログで書いたが、その業務をお金を支払って行政書士に依頼する理由がどこにあるかが問題となる。
では、どういう理由があれば行政書士に依頼をするか。
①社員の数が少ないか本業が忙しくて手が回らない会社。 そういう会社は勿論、宅建の更新なんかのニーズも出てくるはず。
②その行政書士(人)を信頼をしており、その業務だけでなく色々なアドバイスを受けることができるというメリットを感じている場合。
③自分で申請(処理)するにはハードルが高い場合。
恐らく、これらは不動産業界以外にも言えることではないだろうか。
いずれかに当てはまれば行政書士として受注できるチャンスは広まるのではないかと感じる。
開いたままのドア③
マンションの廊下部分には屋根があるが、外側に面しているため、横風に乗った雨が顔に容赦なく降りかかってくる。
息を整え501号室の前でドアを見つめる。
連絡してきた丸山さんの話ではドアが半開きのままということであったが、閉まっている。
「あれ、閉まってるじゃないですか」
先に口を開いたのはラキ子だ。
風で勝手に閉まった?
そもそもマンションのドアが開いた状態になることは通常あり得ない。ドアの重みで自然と閉まるようにクローサーという上部にある機械で調整されているはず。
電話の時から気になっていた部分だ。
私はラキ子の言葉に小さく頷き、インターホンを押した。
返答はない。
耳を澄ますが、雨音と風の音で室内の様子を探ることは出来ない。
もう一度インターホンを押す。
ガサガサ、、
はっきりと部屋から物音が聞こえた。
ラキ子もその音に気がついたようでお互いの視線を合わせる。
それから少しの間があって、カチッと鍵を開ける音がした。
一瞬身構える。
そしてゆっくりドアが開き、背の高い若い男性が顔をだした。
「箕浦さん?」
私は501号室の住民の名前を呼んだ。
「あ、はい、、」
全身から力が抜けるのを感じた。
「管理会社ですけど、隣室の丸山さんから箕浦さんの部屋の扉が開いたままでおかしい、という連絡が入ったので様子を見にきたんですよ」
ボサボサの髪と上下のスウェット姿から、寝起きであることは想像に難しくない。
「とにかく、問題はないよね」
手で雨を凌ぎながら、少し尖った口調で私は言った。
「あ、すいません、、、実家に帰るのに電車の時間がぎりぎりで、鍵もかけず飛び出してしまったみたいです、、ドアに靴が挟まったままで、、本当にご迷惑おかけしました」
ドアノブに手をかけたまま申し訳なさそうに頭を下げた。
「何もなくてよかったです!次は気をつけてくださいね」
ラキ子の言葉でこの件は終わりを告げた。
我々はその後、丸山さんに事情を説明しマンションを後にした。雨は小降りになっていた。
(この件について)
3回に渡り、引っ張った割には何の展開もなく、死体も犯人も出てきませんでしたが(笑)あくまで実話なのでご容赦ください🙇♂️
ちなみに最近、特にオートロックのマンションの方は、鍵をかけずに出て行かれる方が多い気がします。
気をつけて欲しいものです😟
開いたままのドア②
会社からそのマンションまではそれ程遠くなく、車で10分も走れば着く距離だ。
雨は一向に止む気配もなく、一段と激しく降りはじめた。風も強くなってきたようだ。
しばらく車を走らせ、もう少しで到着というところで、マンション前面通り工事をしているのが目に入った。
片側通行で、さらに掘削作業もしているため、マンションの専用駐車場に入れるのは難しそうである。
仕方ないので、かなり手前のパーキングに入れる事にする。
「こんな雨の中、最悪やな」
「最悪ですね」
カッパを着てきたのがせめてもの救いだ。
大雨強風の中、さほど役に立たない傘をさしマンションへ向かう。
直ぐに膝から下はびしょ濡れ状態となった。
何故か小走りになるラキ子。
ヒールを履いていると174センチの自分とさほど変わらなくなる後ろ姿は颯爽としている。新卒から4年間チームを組んで働いているが、今では頼もしいパートナーだ。
仕事から決して逃げず、責任感が強い。
今もそうだ。
こんな大雨の中、自分から同行を志願してくれた。
「先に丸山さんとこいきますか?」
連絡をしてきた丸山さんは502号室。
「いや、とにかく501号室へ行こう」
このマンションは築30年でエレベーターはない。
階段を上る足取りは重いが、ゆっくりもしてられない。一気に上がる。
階段から廊下に出て、突き当たりが501号室だ。
丸山さんの502号室を通り過ぎ、501号室へ向かう。
③へ続く
開いたままのドア①
先日、管理マンションに住んでいる、60代男性入居者から連絡があった。
「隣の部屋、昨日の朝からずっと玄関ドアが半開きで、隙間から靴が散乱しているのが見えている。全く物音もしない。コロナのこともあるし、中に入るのも怖いので見に来て欲しい」
という内容。
数年前の事を思い出した。
大学生の息子に連絡がつかないので、部屋の様子を見てきて欲しいとの事だった。
マンションに着きインターホンを鳴らすが返事がない。ドアを叩き名前を呼んでみる。
「入りますよ!」
声をかけて、保管している鍵で中に入ると、足の踏み入れ場が無い程ゴミで溢れた狭い室内の中、入居者の若い男性が仰向けで倒れていた。
その場で、救急車を呼んだ。
結果、急性アルコール中毒で意識を失っていたのであった。命に別状は無かった。
今回はどういう状況なのか。。
とにかくその住人をデータで調べる。
大学生の男の子。
会ったことはないが嫌な予感。
まず携帯電話にかけてみる。
電話繋がれば問題解決する。
〜お客様のおかけになった電話は、電波の届かないところにおられるか、電源が入っていないためお繋ぎできません〜
ため息と同時に受話器を置いた。
出かける準備をしていると、隣の席に座っている入社4年目の部下、ラキ子が声をかけてきた。電話のやり取りを聞いていたみたいだ。
「何かあったら大変なので、私も行きます!」
いつもすごく気の回る子だ。
「いいよ、見に行くだけやし、一人で充分。
デスクワーク溜まってるから、そっち片付けといてくれたらいい。」
正直、もしもの時、そんな現場を若い女性に見せたくない。
「もう、全部できました!」
嘘だというのは、机に散乱している書類で一目瞭然。
女性ながら頼もしいヤツだ。
「じゃあ頼むわ。なんかあったら俺先に逃げるしな」
「闘っときます」
いったい、どんな状況を想定してるんだろう笑
大雨の中、二人はカッパをはおり車に乗り込んだ。
②へ続く
行政書士として
私は不動産会社に勤務しているが、実は行政書士でもある。令和元年に登録。
と言ってとも、諸事情あり、行政書士業務をオープンに取り組むことはできない状況😭
先日、テナントで入居してもらっている、誰もが知ってる大手企業から酒類販売許可を取りたいので、相談したいと連絡があった。
もちろんその相談は行政書士としてではなく、不動産会社担当者として。
賃貸借契約の文言訂正や場所的要件の確認、土地所有者の承諾等が必要のよう。
数ヶ月前も新規入店して頂いた企業さんから同様の話があったので酒類販売許可は2件目。
ある意味、コロナ禍においてはこの流れは当然なのかもしれない。
面談当日、勿論、私が行政書士であることは言えない。
不動産会社の担当者として対応する。
でも、一つだけ聞いておきたい。
「その申請は行政書士に依頼されるんですか?」
話が一通り終わったところで聞いてみた。
2社とも回答は同じであった。
「私が申請します」
つまり、行政書士が扱うべき業務は少なくない。特に不動産業界にいるとそう感じる。
ただ、それを、企業がそこにお金を落として、依頼する理由があるかどうか。
「実は、私行政書士なんで、申請やりますよ!」
と言えたとしても、受注できたかどうかはわからない。
心にモヤモヤが残るが、今は実務の勉強をさせてもらっているとポジティブに捉えよう。
賃料滞納者の言い訳
毎月、月初になるとやらないといけないことがある。
そう、賃料の入金確認と督促。
大抵の賃貸借契約では、月末までに翌月分の家賃を支払う契約になっている。
なので、月初は忙しい。
うちの部署では400戸程の賃料管理をしているが、その中で入金の遅れがちなレギュラー組が数人いる。
まずは電話で督促。
その次は書面で督促。
それでも入らなければ直接督促に訪問。
2ヶ月滞納になれば内容証明。
そんな感じ。
電話をかけても留守電の場合が多く、メッセージを残しておくが、翌日に入金になることは稀である。
中には着信拒否をしている不届き者もいる😡
その時点で既に信頼関係は崩壊している😤😤😤😤😤
そういう時は、グループ会社の電話や個人の携帯からかける。
ほとんど、ついうっかり出てくれる。笑
「管理会社ですけど」
慌てふためき、支離滅裂に話し出す。
「あ、体調壊して、入院していました」
ホントこれ多い。
おたく、数ヶ月前も入院してたよな。
仮に入院していても家賃払わない理由にならん!!😡
「あ、払ったつもりでいました」
それならなんで着信拒否してんねん!!😡
と、言いたいことは山ほどあるが、
「取り敢えず期日すぎてますから、早急に入金してくださいよ。それから電話はつながるように」
正直こういう対応疲れます。
約束はきちんと守りましょう。
隣人トラブル!?②
翌朝、昨日のいびきの件を考えながら、会社のパソコンで防音対策用の吸音材や吸音パネルを眺めていた。
と、その時電話が鳴る。
電話を受けた女子社員が寄ってくる。
「○○マンションのYさんからお電話です」
ちょっと心臓の鼓動が早くなった気がした。
「おはようございます、リーマンXです」
「おう、今日、隣の奴、何か言うとったか!?」
唐突すぎて一瞬戸惑う。
「いや、昨日はいびきの件、お伝えした事は報告しましたが、今日は何も」
「そうか。。。」
トーンが下がる。
「何かありましたか?」
尋ねてみた。
「昨日、あれからすぐ薬局行ってやな、いびきに効く鼻につけるテープ買ったんや。医者行こう思ったけど仕事で時間なかったからな。ほんでな、昨日はそれつけてな台所で寝たんや。そやからな、どうやったかな思っとったんや」
薬局に医者に、台所。
あまりにも予想外の内容に驚く。
「Yさん、そこまでしてくれたんですか、ありがとうございます」
とっさに出たのはお礼の言葉だった。
「いや、俺もな、以前いびきのことで文句言ってた一人やからな、その辛さよーわかるんや。人間しっかり寝んと働けへん。隣の兄ちゃんに謝らなあかんな」
Kさんてバレてるやん。
「では、この電話の内容お伝えしておきますね。また連絡します」
恐らく私は自然と微笑んでいたと思う。
早速Kさんに電話をかける。
Kさんは直ぐに電話に出た。
電話の内容を、Yさんの取った行動をしっかりと伝えた上で、昨晩のいびきはどうだったか聞いてみた。
「昨晩は本当に静かで、ぐっすり眠ることが出来ました」
よっしゃ〜!!
「それは、良かったですね!」
KさんはそこまでしてくれたYさんに申し訳ない、申し訳ない、と何度も繰り返していた。
そして、今日直接お礼を言いに行ってきますとのことだった。
Yさん、知ったら喜ぶだろうな。
この2人、今後トラブルにはまずならないだろう。
それにしても、あのYさんが鼻にテープをして台所で寝てる姿を想像するとこっちまで申し訳なく思ってしまう。
みんなYさんのような、思いやりのある人ばっかりだったら、隣人トラブルなん起きないのになと思った一幕であった。