開いたままのドア①
先日、管理マンションに住んでいる、60代男性入居者から連絡があった。
「隣の部屋、昨日の朝からずっと玄関ドアが半開きで、隙間から靴が散乱しているのが見えている。全く物音もしない。コロナのこともあるし、中に入るのも怖いので見に来て欲しい」
という内容。
数年前の事を思い出した。
大学生の息子に連絡がつかないので、部屋の様子を見てきて欲しいとの事だった。
マンションに着きインターホンを鳴らすが返事がない。ドアを叩き名前を呼んでみる。
「入りますよ!」
声をかけて、保管している鍵で中に入ると、足の踏み入れ場が無い程ゴミで溢れた狭い室内の中、入居者の若い男性が仰向けで倒れていた。
その場で、救急車を呼んだ。
結果、急性アルコール中毒で意識を失っていたのであった。命に別状は無かった。
今回はどういう状況なのか。。
とにかくその住人をデータで調べる。
大学生の男の子。
会ったことはないが嫌な予感。
まず携帯電話にかけてみる。
電話繋がれば問題解決する。
〜お客様のおかけになった電話は、電波の届かないところにおられるか、電源が入っていないためお繋ぎできません〜
ため息と同時に受話器を置いた。
出かける準備をしていると、隣の席に座っている入社4年目の部下、ラキ子が声をかけてきた。電話のやり取りを聞いていたみたいだ。
「何かあったら大変なので、私も行きます!」
いつもすごく気の回る子だ。
「いいよ、見に行くだけやし、一人で充分。
デスクワーク溜まってるから、そっち片付けといてくれたらいい。」
正直、もしもの時、そんな現場を若い女性に見せたくない。
「もう、全部できました!」
嘘だというのは、机に散乱している書類で一目瞭然。
女性ながら頼もしいヤツだ。
「じゃあ頼むわ。なんかあったら俺先に逃げるしな」
「闘っときます」
いったい、どんな状況を想定してるんだろう笑
大雨の中、二人はカッパをはおり車に乗り込んだ。
②へ続く