開いたままのドア②
会社からそのマンションまではそれ程遠くなく、車で10分も走れば着く距離だ。
雨は一向に止む気配もなく、一段と激しく降りはじめた。風も強くなってきたようだ。
しばらく車を走らせ、もう少しで到着というところで、マンション前面通り工事をしているのが目に入った。
片側通行で、さらに掘削作業もしているため、マンションの専用駐車場に入れるのは難しそうである。
仕方ないので、かなり手前のパーキングに入れる事にする。
「こんな雨の中、最悪やな」
「最悪ですね」
カッパを着てきたのがせめてもの救いだ。
大雨強風の中、さほど役に立たない傘をさしマンションへ向かう。
直ぐに膝から下はびしょ濡れ状態となった。
何故か小走りになるラキ子。
ヒールを履いていると174センチの自分とさほど変わらなくなる後ろ姿は颯爽としている。新卒から4年間チームを組んで働いているが、今では頼もしいパートナーだ。
仕事から決して逃げず、責任感が強い。
今もそうだ。
こんな大雨の中、自分から同行を志願してくれた。
「先に丸山さんとこいきますか?」
連絡をしてきた丸山さんは502号室。
「いや、とにかく501号室へ行こう」
このマンションは築30年でエレベーターはない。
階段を上る足取りは重いが、ゆっくりもしてられない。一気に上がる。
階段から廊下に出て、突き当たりが501号室だ。
丸山さんの502号室を通り過ぎ、501号室へ向かう。
③へ続く