管理会社の日常はミステリー

不動産管理会社勤務のリーマンXの日常業務を綴っていきます。

開いたままのドア③

マンションの廊下部分には屋根があるが、外側に面しているため、横風に乗った雨が顔に容赦なく降りかかってくる。

 

息を整え501号室の前でドアを見つめる。

連絡してきた丸山さんの話ではドアが半開きのままということであったが、閉まっている。

 

「あれ、閉まってるじゃないですか」

先に口を開いたのはラキ子だ。

風で勝手に閉まった?

そもそもマンションのドアが開いた状態になることは通常あり得ない。ドアの重みで自然と閉まるようにクローサーという上部にある機械で調整されているはず。

電話の時から気になっていた部分だ。

 

私はラキ子の言葉に小さく頷き、インターホンを押した。

返答はない。

耳を澄ますが、雨音と風の音で室内の様子を探ることは出来ない。

 

もう一度インターホンを押す。

 

ガサガサ、、

 

はっきりと部屋から物音が聞こえた。

 

ラキ子もその音に気がついたようでお互いの視線を合わせる。

 

それから少しの間があって、カチッと鍵を開ける音がした。

 

一瞬身構える。

 

そしてゆっくりドアが開き、背の高い若い男性が顔をだした。

 

箕浦さん?」

 

私は501号室の住民の名前を呼んだ。

「あ、はい、、」

全身から力が抜けるのを感じた。

 

「管理会社ですけど、隣室の丸山さんから箕浦さんの部屋の扉が開いたままでおかしい、という連絡が入ったので様子を見にきたんですよ」

 

ボサボサの髪と上下のスウェット姿から、寝起きであることは想像に難しくない。

 

「とにかく、問題はないよね」

手で雨を凌ぎながら、少し尖った口調で私は言った。

 

「あ、すいません、、、実家に帰るのに電車の時間がぎりぎりで、鍵もかけず飛び出してしまったみたいです、、ドアに靴が挟まったままで、、本当にご迷惑おかけしました」

ドアノブに手をかけたまま申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「何もなくてよかったです!次は気をつけてくださいね」

ラキ子の言葉でこの件は終わりを告げた。

 

我々はその後、丸山さんに事情を説明しマンションを後にした。雨は小降りになっていた。

 

 

(この件について)

3回に渡り、引っ張った割には何の展開もなく、死体も犯人も出てきませんでしたが(笑)あくまで実話なのでご容赦ください🙇‍♂️

ちなみに最近、特にオートロックのマンションの方は、鍵をかけずに出て行かれる方が多い気がします。

気をつけて欲しいものです😟